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テレビやラジオのCMなどでも聞くことの多い「グレーゾーン金利」。検索してみると、「利息制限法を超えていて出資法を超えない範囲の金利」という紹介をよく見かけます。
しかし、なぜ法律がふたつ出てくるのか、法律上の上限を超えているのにアウトではなくグレーと言われているのはなぜなのか、そんな疑問を持った人も多いのではないでしょうか。 実は、このグレーゾーン金利について、間違った理解をしている人も少なくありません。
今、この記事を読んでいるあなたも、こんなことを思ったことはありませんか?
「グレーっていうくらいだから、契約しちゃダメってことじゃないのではないか」 「グレーゾーンでも、契約したのは自分だから、その通り借金の返済をしなくてはいけないのではないか」
グレーゾーン金利部分の金利は無効ですので、契約してよいわけでもなく、その通り支払う必要もありません。
そこで、この記事ではグレーゾーン金利について次のことをご紹介します。
- グレーゾーン金利とはどういう金利なのか
- 自分の契約がグレーゾーン金利に該当するか確認する方法
ぜひグレーゾーン金利について正しい知識を身に着け、グレーゾーン金利で契約をしていた場合の対処ができるようにしましょう。
グレーゾーン金利は違法だけど犯罪ではない範囲の金利のこと
消費者金融などで借り入れをした場合に言われるグレーゾーン金利とは「利息制限法の上限を超えているが、出資法の上限を超えていないので、違法だけど犯罪ではない範囲の金利」のことを言います。
消費者金融などに適用されている「貸金業法」という法律では、「利息制限法」の利率で契約をするように定められています。 具体的に、金額に応じて次のように利率が変わります。
残元金 | 利率の上限 |
---|---|
0~10万円 | 年20% |
10万円~100万円 | 年18% |
100万円以上 | 年15% |
そして、金利を定める法律にはもう一つ「出資法」というものがあり、当時のこの法律では利率の上限が29.2%と定められており、これを超えると刑事罰の対象となります。 これに対して、利息制限法を超えても出資法のように刑事罰がありません。
つまり、利息制限法を超えても出資法を超えなければ、貸金業者は罰せられなかったのです。これがグレーゾーン金利と呼ばれる理由です。
貸金業法の例外規定を利用して、グレーゾーン金利の契約が多発していた
さらに、当時の貸金業法には、条件を満たせば利息制限法の上限を超えて契約をすることができる例外規定(みなし弁済)がありました。例外が適用できれば出資法の上限である29.2%まで設定することができたのです。
利息制限法を超えても罰則はなく、しかも超えて契約できる方法があるならば、貸金業者は少しでも高い利息で契約をしたいと考えます。 そのため、例外規定を利用し、利息制限法を超えるけれども、出資法は超えない範囲で契約を締結するケースが多発したのです。
グレーゾーン金利の部分の契約は無効
もともと、利息制限法を超えて契約した部分は民事上無効とされており、請求すれば返金をしてもらうことができます。 先ほどご紹介した例外規定も、最高裁まで争った結果、無効なものであると判決が下され、現在は例外規定そのものがありません。 これにより、グレーゾーン金利の範囲で契約していた人は、本来の利息制限法の利率に計算しなおし、超過分は返金をしてもらうことができます。
また、まだ返済中の人も、本来の利息制限法の利率で計算しなおした結果、元金が減る、すでに完済となる場合、計算しなおした金額を適用することができます。
グレーゾーン金利で契約していたらどうなるのか?
グレーゾーン金利がどういったものなのかは、イメージができたと思います。
先ほどご紹介した通り、グレーゾーン金利の契約は無効になりますが、それでは、実際にグレーゾーン金利で契約していた場合、どんなことが起こるのでしょうか。これは、完済済みか返済中かで少し変わってきます。
それぞれ、どのようなことが起こるのか見ていきましょう。
すでに完済済みの人は、払いすぎたお金が戻ってくる
すでに完済している人は払いすぎたお金が戻ってきます。 利率が下がって払うべき金額が安くなるのですから、あなたが返済した金額ではおつりが出るのです。
払いすぎておつりが出ている分は、請求すれば返金してもらうことができます。
まだ返済中の人は残元金が減る、返済がなくなる、もしくはさらにお金が戻ってくる
まだ返済中の人も、払いすぎた利息を元金に充てて計算しなおすことで、残元金が減ります。これにより、返済総額が減る人もいれば、払いすぎた利息で返済が完了する人もいます。中には、完済どころかお金が戻ってくる人もいるのです。
どれくらい減るのかは実際にあなたの取引履歴をもとに利息制限法にのっとった利率で計算しなおす必要がありますので、弁護士や司法書士へ相談をすると良いでしょう。
自分がグレーゾーン金利を払っているか見極めるポイント2つ
あなたがグレーゾーン金利で契約をしているかどうかは、契約書や取引明細など、契約内容がわかる書類を見て、次の2つをチェックすることで簡単に見極めることができます。
グレーゾーン金利のチェックポイント | |
---|---|
金利の上限 | 15%~20%よりも高い |
取引をしていた期間 | 2010年6月18日よりも前から |
それぞれ、詳しくご紹介します。
金利が上限(15%~20%)を超えていたらグレーゾーン確定
初めにご紹介した通り、利息制限法では残元金に応じて利率の上限が変わります。 以下の利率上限を超えて利息が設定されている場合、グレーゾーン金利で契約をしていることになります。
残元金 | 利率の上限 |
---|---|
0~10万円 | 年20% |
10万円~100万円 | 年18% |
100万円以上 | 年15% |
残元金に応じて利率が変わるので、今の自分の上限利率が何%なのかがよくわからない場合は「20%を超えているか」を確認してください。 最も高い利率は20%ですので、それを超えているならグレーゾーン金利で契約をしていると考えて間違いないでしょう。
また、個人の借り入れの場合、多くの人は残元金が100万円未満でしょうから、18%を超えている人もグレーゾーン金利である可能性が高いと言えます。18%を超えている人は次のポイントも併せてチェックしてみてください。
2010年6月18日より前から取引していたら可能性あり
もうひとつは、取引の期間を確認する方法です。 最高裁判所の判決を受け、法律が改正されたのが2010年6月18日ですので、これ以前に取引をしている場合、グレーゾーン金利で契約をしている可能性が高くなります。
ただし、最高裁の判決が出てから、貸金業者は段階的に利率の引き下げを行っているケースもありますので、法改正前の1年程度の期間の取引は、必ずしもグレーゾーン金利になっているとは限りません。
特に、法改正間近に借り入れを開始した場合は正しい利率で契約をしていることが多いので、期間だけで断定しないようにしましょう。 可能性があるとわかったら、取引履歴を取り寄せるか、弁護士もしくは司法書士に相談して、詳細な調査を依頼しましょう。
契約内容が分からない場合の対処方法
手元に契約内容がわかる書類がなく、契約していた金利が分からないという人も、次のどちらかの方法で解決することができます。
- 1. 自身で取引履歴を取り寄せる
- 2. 弁護士もしくは司法書士へ相談する
どちらの方法も、難しいことではありません。今日すぐにでもできることですので、可能性がある人はぜひ実行してみてください。
自身で取引履歴を取り寄せる
自分で取引履歴を取り寄せる場合、自身が契約している貸金業者へ連絡し、「取引履歴の開示をしてほしい」と伝えると対応してもらえます。お手持ちのカードの裏面などに気指されている連絡先へ連絡してみると良いでしょう。
手元にカードがない場合は、ホームページに掲載されている相談ダイヤルや、お客様センターなどへ連絡をしてみてください。担当部署へ案内をしてもらえるはずです。
取引履歴の請求をするとおおむね1週間から10日ほどで取引履歴が郵送されてきますが、中には1か月以上かかるところもあります。会社によって期間が異なりますので、気になる人は電話で請求する際に確認をしておきましょう。
弁護士もしくは司法書士へ相談する
弁護士、もしくは司法書士へ相談をすると、あなたの状況を聞き、グレーゾーンで契約をしている可能性が高いかどうか判断をしてくれます。 また、相談と取引履歴を取り寄せた調査を無料で行ってくれるところも多いので、「とりあえず自分はどうしたらいいか」迷ったら弁護士や司法書士に聞いてみると良いでしょう。 電話での問い合わせでも、大筋の状況を聞き、アドバイスをもらうことができます。
グレーゾーン金利を払っていたことが分かったら詳細な調査をしましょう
もし自分がグレーゾーン金利を払っていたことが分かったら、次はいくら借金が減るのか、いくらお金が戻ってくるのか、詳細な調査をしましょう。 具体的には、過去の取引履歴のすべてを、利息制限法にのっとった利率で計算しなおします。
インターネット上に自分で計算できるテンプレートを配布しているサイトもあります。そういったものを使いながらやってみると良いでしょう。
ただ、再計算は取引の最初からやらなければいけないことや、クレジットカードのキャッシング機能を利用していた人の場合、ショッピング枠は省いて計算をしなければならないことなど、慣れていないと間違った計算結果が出てしまうこともあります。
計算のやり方がよくわからない場合だけでなく、ご自身で一通りの計算ができた場合でも、1度弁護士や司法書士に内容を確認してもらうようにしましょう。
まとめ
グレーゾーン金利は、「利息制限法の上限を超えているが、出資法の上限を超えていないので、違法だけど犯罪ではない範囲の金利」のことを言います。
利息制限法を超えた金利も、本来は無効になるはずなのですが、当時の貸金業法には例外規定があり、条件を満たせば利息制限法の合法的に上限を超えて契約することができたために、グレーゾーン金利で契約をしている人がたくさんいました。
現在は、利息制限法は改正されこの例外規定はなくなりました。また、出資法も改正され上限利率が引き下がったことで、グレーゾーン金利が発生することもほぼありません。 もしあなたがグレーゾーン金利で契約していたら、残元金が減ったり、払いすぎたお金が戻ってきたりする可能性があります。
ご自身の契約内容を確認して、利率が利息制限法の上限を超えていないか確認しましょう。 利率は、金額に応じて次のように変わります。
残元金 | 利率の上限 |
---|---|
0~10万円 | 年20% |
10万円~100万円 | 年18% |
100万円以上 | 年15% |
利率が分からない人は、2010年6月18日より前に取引をしていたことがあるかが、目安となります。 もし当てはまるようであれば、利息制限法のっとった利率で計算しなおすか、弁護士もしくは司法書士へ相談をしてください。