この記事の監修者
借金の返済が困難になり、債務整理を検討する方は少なくありません。
しかし、債務整理をすることでどんなデメリットがあるのか分からないという理由から、手続きに踏み出せないでいる方も多いのではないでしょうか?
法律で認められた手続きだと言われても、もとあった契約を変えて減額をしてもらうのですから、「代償が何かある」と考えてしまうのもおかしいことではありません。
実際、債務整理をしたらどんなデメリットがあるのでしょうか?
債務整理をすることで起こるデメリットには、どの手続きにも共通しているものと、手続き固有の者があります。どんなデメリットがあるのかを事前に知ってから検討したい方のために、この記事では、債務整理のデメリットについて、詳しくご紹介します。
手続きごとにデメリットは異なる
債務整理手続きのデメリットは手続ごとに異なり、一番デメリットが少ないのは「任意整理」で、続いて「個人再生」、「自己破産」となります。 どの手続きにも一定のデメリットがあり、利用する前に自分はどの手続きをするのがもっともメリットが大きいのかを検討する必要があります。
各手続きのデメリットをまとめると以下のようになります。
すべての手続きに 共通するデメリット |
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個人再生と自己破産に 共通するデメリット |
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各手続き特有の 主なデメリット |
任意整理 | ・元金の大幅カットは難しい |
個人再生 | ・手続き後も支払が続く ・利用のための条件が厳しく手続きも複雑で難しい |
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自己破産 | ・財産を差し押さえられる場合がある ・手続きが終了するまで制限されるものがある |
ぱっと見でどういうことなのかわかるものもあれば、内容がイメージできないものもあると思います。 それぞれ解説をしていきますので、ご自身の状況と照らし合わせてみてください。
どの債務整理手続きにも共通のデメリット
どの手続きをしても必ず起こる共通のデメリットが2つあります。
- 弁護士や司法書士に依頼すると費用がかかる
- 信用情報に記録される
手続きをするうえで、どちらも気になる内容なのではないでしょうか。 ひとつずつ見ていきましょう。
弁護士や司法書士に依頼すると費用がかかる
まず、弁護士や司法書士に依頼すると費用がかかることです。 どの手続きでも、相談は無料で行っているところが多いので、いったん話を聞いてから検討することもできます。
具体的な金額は、手続きによって変わりますがそれぞれの手続きの費用の相場感や以下のようになります。
任意整理個人再生自己破産相談料 | 0円~5,000円/30分 | 0円~5,000円/30分 | 0円~5,000円/30分 |
---|---|---|---|
着手金 | 0円~50,000円/債権者1社あたり | 0円~500,000円 | 0円~300,000円 |
基本報酬 | 20,000円~50,000円/債権者1社あたり | 200,000円~400,000円 | 0~300,000円 |
成功報酬 | 減額できた金額の10% | 減額できた金額の10% | なし |
裁判所の 手数料 |
なし | 25,000円程度(裁判所により異なる) | 15,000円~25,000円程度(裁判所、手続き内容によって異なる) |
日当 | なし | 10,000円~30,000円 | 10,000円~30,000円 |
郵送などの 実費 |
1,000円~3,000円 | 1,000円~3,000円 | 1,000円~3,000円 |
このほかにかかる可能性がある費用として、出張費用や、返済代行手数料などがあります。
出張費用は、相談や面談のために弁護士や司法書士が出張相談に来た場合にかかる費用で、大体1万円程度の事務所が多いでしょう。
返済代行手数料とは、手続き後の返済を弁護士事務所や司法書士事務所に代わりに取りまとめて振込をしてもらう場合にかかる手数料です。各債権者へ事務所が振込をしてくれるので、複数の会社の債務整理をした場合に利用することが多いサービスで、1社あたり毎月数百円から1,000円程度の手数料がかかるところが多いようです。
これらの費用の支払いは、手続きを正式に依頼したら、少しずつ事務所へ積み立てを行うのが一般的です。 そして、これだけの費用が払えるのか、返済に加えて弁護士や司法書士の支払いが発生するのかと懸念している方もいるのではないでしょうか。
まず、弁護士や司法書士に手続を依頼すると、債務額が変わらないようにするために、依頼した時点で債権者への支払いがいったんストップします。 その間に積み立てを行いますので、今返済している額以上の出費が毎月発生することはないと考えて問題ありません。
支払不能の状態を脱するための手続きですので、今以上に支払に追われることのないように、弁護士や司法書士がスケジュールを立てて手続きを進めてくれますので安心してください。 その他、法テラスに対応している事務所もあります。
法テラスの利用ができる事務所の場合、通常よりも費用が安くなったり、費用の立替制度が利用できたりすることがあります。
信用情報に記録される(ブラックリストに載る)
もうひとつは、信用情報に弁護士や司法書士が介入したことなどが記録されることです。 いわゆるブラックリストのことですが、ブラックリストというリストがあるわけではなく、信用情報機関に事故情報が記録されることを言います。
一般的に、事故情報が記録されると、任意整理の場合は完済してから5年程度、個人再生や自己破産は5年から7年保有されます。 この間は新たな借り入れの契約をしようとしても与信が通らず借りられない状態となります。
絶対ではありませんが、通常は消費者金融のキャッシングだけでなく、住宅ローンなど銀行からの融資も受けられない状態となりますので、将来的に家や車を購入したいと考えているのであれば、早めに手続きをしましょう。
個人再生、自己破産に共通のデメリット
個人再生、自己破産は任意整理と異なり裁判所を通じて行う手続きです。 そのため、この2つの手続きには、任意整理とは異なるデメリットがあります。 任意整理と比較して圧縮できる債務の額も大きいですが、制約も多くなります。
知らないまま手続きをして、後から困ることのないよう主なデメリットを把握しておきましょう。
まずは、個人再生と、自己破産に共通するデメリットをご紹介します。
官報に載る
官報とは、政府が発行する新聞のようなものです。 法令の交付や国会の議案に関すること、官僚の異動情報といった政府に関係することのほか、会社の設立や解散などの公告、破産や失踪宣告などの裁判所公告、国家試験の合格者氏名などが掲載されています。
官報は、全国にある官報販売所で税込143円で購入することができるほか、直近30日分はインターネットから無料で閲覧することもできます。
個人再生や自己破産をすると、この官報に住所、氏名、決定日などが掲載されます。 つまり、もしあなたが個人再生や自己破産をしたら、官報をみればそれがわかるのです。
しかし、官報を見ているのは、区役所の職員や銀行員、信用情報機関の職員といったごく限られた人です。さらに、特定の人が破産で官報に載っていることを知るには、あらかじめ裁判所が手続きを決定した日を知っているか、毎日欠かさずチェックしていなければ難しいですので、官報に掲載されたことで周囲の人に債務整理をしたことを知られる可能性はかなり低いと言えます。
自分で手続きをすると家族バレのリスクが高い
個人再生や自己破産を手続きする際に、裁判所に書類の送付場所を届け出る必要があります。 自分で手続きをする場合、裁判所からの書類の送り先は自宅で届け出ることになるはずですので、家族に裁判所からの手紙を見られてしまう可能性があります。
実は、借金をしていることが家族にバレてしまう代表的な要因のひとつが、裁判所からの通知や手紙です。 自分で手続きをしようとしている人は、自宅に書類が届くことを念頭に置いておいてください。
書類が自宅に届くことを避けたい人は、弁護士や司法書士に依頼することをお勧めします。 弁護士や司法書士に依頼することで、書類の送達場所を弁護士事務所や司法書士事務所に指定することができ、自宅へ直接書類が届くことを避けることができます。
保証人へ請求が行く
個人再生や自己破産をしたときに、保証人や連帯保証人がついている債務があると、あなたが払えない分は保証人へ請求が行きます。
これは、たとえあなたが自己破産をして借金を免除されたとしても、保証人は免除されず、一般的には残りの全額が一括で請求されます。
そのため、個人再生や自己破産をする場合、保証人も債務整理を検討するなど、保証人へ請求がされた場合の対応も考えなくてはいけません。
手続きの代行は弁護士しかできない
個人再生と自己破産は地方裁判所が管轄する手続きで、弁護士しか手続きの代行ができません。 司法書士は、書類の作成を代行することができますが、裁判所へ書類を提出したり、あなたに代わって裁判所へ出頭したりすることができません。 そのため、司法書士に依頼する際は、書類の提出等は自身で行く必要があります。
しかし、「家族バレのリスク」のところでご紹介したとおり、書類の送達場所を司法書士事務所に指定することができます</span >。これをすることによって、司法書士に書類の作成を依頼しているケースでも、裁判所から届いた書類を依頼者がわざわざ司法書士事務所持って行く必要がなく、司法書士主導で手続きの準備を進めることができますので、実質代行しているのと変わらずに手続きをすることができます。
今、司法書士への依頼を検討している人も、個人再生や自己破産の手続きは司法書士に依頼したら損になるということはありませんので安心してください。
任意整理特有のデメリットは元金の大幅カットが難しい点
任意整理が他の債務整理と異なるのは、元金の大幅カットが難しい点です。 任意整理は、当事者同士で話し合い、毎月の返済額・回数を見直したり、利息のカットをして総額を減らしたりするのですが、元金については、ケガや病気で長期入院をしているなど、特別な事情がない限りそのまま払い続けるのが通常です</span >。
そのため、元金のみの支払いにしても返済がままならない場合は、個人再生や自己破産を検討しましょう。
個人再生特有の主なデメリット2つ
個人再生特有のデメリットは主に2つあります。
どちらも、手続きを検討するうえでポイントとなる部分ですので、ひとつずつ見ていきましょう。
手続き後も支払が続く
個人再生は、裁判所を通じて借金を減額してもらい、残りを分割して支払う手続きです。 そのため、自己破産と異なり借金の免除がされるわけではありませんので、気を付けてください。
借金などの総額(住宅ローンを除く)に応じて、次の通り最低返済額の目安があります。
借金の総額 | 最低返済額の目安 |
---|---|
100万円未満 | 総額全部 |
100万円以上500万円以下 | 100万円 |
500万円を超え1500万円以下 | 総額の5分の1 |
1500万円を超え3000万円以下 | 300万円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 総額の10分の1 |
この金額を、原則として3年で返済をしていきます。
たとえば、返済総額が100万円になったら、毎月2万8千円程度の返済をしていくことになります。 この支払いが困難な場合、個人再生の手続きは難しいと言えます。
利用のための条件が厳しく手続きも複雑で難しい
もうひとつのデメリットは、利用のための条件が厳しく、手続きも複雑で難しいことです。 個人再生を利用するためには、大まかに次のようなステップで進んでいきます。
- 利用のための条件を満たしているか確認する
- 裁判所へ申立をし、必要な書類を提出する
- 債権や財産の調査
- 再生計画の作成・提出
- 債権者への意見聴取など
- 再生計画の認可の決定
そして、利用のための条件は次の通りです。
- 借金などの総額(住宅ローンを除く)が5000万円以下であること
- 将来にわたり継続的に収入を得る見込みがあること
- 収入が給料などで、その金額が安定していること
減額した借金を3年で支払うことを裁判所に認めてもらう手続きですので、安定した収入がなければ、個人再生を利用することはできません。条件を満たしていることが確認出来たら、申立書類をそろえて裁判所へ提出するのですが、申立書類の作成だけでも知識がない人だと何をどう書いていいかわからないでしょう。
加えて、裁判所へ申し立てをするには、陳述書、債権者一覧表、給与明細や源泉徴収票などの添付書類が必要です。 そろえる書類も多く、書類の書き方にも決まりがあるので、やったことがない人には、かなりストレスのたまる作業です。
間違いがあれば受け付けてもらえないので、自分でやろうとすると、申し立てをするだけでも何度も書き直して裁判所へ行かなければならない…ということもあり得ます。
個人再生は「持ち家を手放さずに借金が大幅に減額してもらえる手続き」でもあり、利用を希望する人も多くいますが、その分やり方が難しいので、検討している人は、弁護士や司法書士に依頼をして、スムーズに手続きが進むようにしてもらいましょう。
自己破産特有の主なデメリット2つ
借金整理の最後のセーフティネットである自己破産は、裁判所に支払い不能の状態であると認められれば、借金の支払いが免除されます。 しかし、その分、手続き中は生活上の制約もあるので、「借金をチャラにしたいから自己破産」と安易に利用できる手続きではありません。
具体的には、次の2つのデメリットがあります。
- 財産を差し押さえられる場合がある
- 手続きが終了するまで制限されるものがある
どちらも、自己破産について調べたことがある人であれば聞いたことがあることかもしれません。 詳しく見てみましょう。
財産を差し押さえられる場合がある
自己破産をすると、一定の価値以上の財産は換価し、借金の返済に充てられます。 いわゆる「財産が差し押さえられる」ということですが、差し押さえ財産となるのは、本人名義でかつ価値が20万円以上のものです。
不動産の価値が20万円以下になると言うことはまずないので、持ち家は差し押さえられてしまうと言うのは、このためです。 また、車なども当然20万円を超えますので、原則は差押え財産となります。 このほかに、ブランド品や自動車なども差押えの対象となり得ます。
簡単にまとめると次のものが差押えられる可能性のある財産です。
差押えられる可能性がある財産の一覧
- 不動産
- 車やバイク
- 有価証券
- 貴金属や美術品、ブランド品などの嗜好品
- 生命保険、個人年金
- 退職金
- 仮想通貨
ただし車やバイクについては、仕事や生活で必要な場合がありますので、必ずしも差し押さえられるとは限りません。たとえば、東京地方裁判所では、破産者の生活の再生を支援するため、独自の基準を設けています。
こうしてみると、ほとんどのものが差し押さえられてしまうような気がしますが、そんなことはありません。破産者の生活の再生に必要な財産は「差押え禁止財産」として定められています。 具体的には、次の通りです。
差押え禁止財産の一覧
- 99万円以下の現金
- 20万円以下の預金
- 仕事に必要な器具や設備など
- 最低限の生活必需品
- タンスや調理器具
- 仏像や位牌など
このほかに、各地方裁判所によっては、生命保険の解約返戻金や退職金の一部が差押えの対象とならない場合があります。
手続きが終了するまで制限されるものがある
自己破産をした場合、手続きが完了するまでの生活には一定の制限があります。 代表的なものが次の3つです。
- 就くことができない仕事がある
- 郵便物が管財人に転送される
- 旅行や転居には許可が必要
これらは手続が完了すれば、元通り自由に行うことができるものがほとんどですが、一部の職業については、破産後も一定期間つくことができない場合があるので、注意してください。
【破産にまつわるデマに気を付けましょう】
自己破産をした際のデメリットとして流れている情報の中には、誤ったものも含まれています。 例えば、「破産すると戸籍に載る」というウワサがあるようですが、これは間違いです。確かに、各自治体には破産者名簿が備え付けられていますが、一般の人が見ることはできません。
似たようなウワサでパスポートが取れなくなる、選挙権がなくなるというものもあるようですが、これらも間違っており、そんなことはありません。
また、この先ローンを組むことができなくなるというウワサもあるようですが、これについては、一定期間借り入れはできなくなりますが、二度と借り入れができないわけではありません。
こういったウワサは、手続きを検討する上で不安材料となるものもあるでしょう。そういったときは、弁護士や司法書士に問い合わせるとその場で回答してくれますので、遠慮せずに聞いてみることをおすすめします。
基本的にはデメリットよりもメリットが上回る
ここまで債務整理の各手続きのデメリットについてご紹介してきました。デメリットを見てしまうと、つい行動を起こすことをためらってしまいますが、基本的にはどの手続きも「メリットの方が上回るので悩んでいるならば手続きを検討するべき」と覚えておいてください。
自分にはどの手続きが良いのか、また自分が希望する手続きをやってもらうことができるのか気になる人は、弁護士や司法書士へ問い合わせをしてみましょう。 あなたの状況を聞き、最適な整理の方法を提案してくれますので、それを聞いてから考えても問題はありません。
電話や対面で直接話をするのはちょっと気まずい…という人は、メールフォームやLINEで匿名で問い合わせができる事務所もありますので、そういった事務所へ問い合わせをしてみると良いでしょう。
まとめ
この記事では、債務整理のデメリットについてご紹介しました。 デメリットは各手続きに共通するものと、手続き特有のものがあります。
すべての手続きに共通するデメリット |
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個人再生と自己破産に共通するデメリット |
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各手続き特有の主なデメリット | 任意整理 | ・元金の大幅カットは難しい |
個人再生 | ・手続き後も支払が続く ・利用のための条件が厳しく手続きも複雑で難しい |
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自己破産 | ・財産を差し押さえられる場合がある ・手続きが終了するまで制限されるものがある |
どの手続きにもデメリットは存在しますが、基本的には「メリットの方が上回る」ことを念頭に置いておいてください。
自分はどの手続きが良いのか、希望する手続きをしてもらうことはできるのか気になる場合は、弁護士や司法書士に相談をしてみましょう。あなたの状況にあった手続きを提案してくれます。