「借金の返済が苦しいので債務整理を検討したいけど、どんな手続きがあるのかわからない。」「自分はどの債務整理の手続きをしたらいいのかよくわからない」債務整理の手続きでこのようなお悩みをお持ちの方はとても多くいます。
債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産という3つの主要な手法があることはご存じの方も多いでしょう。しかし、債務整理は法律の知識を必要とする手続きです。ざっとどんな手続きなのかを読んでみたことがある方も、専門用語が多くて、具体的なイメージがさっぱり湧かなかった方もいるのではないでしょうか。
それぞれの手続きは特徴も異なるし、デメリットも存在します。あなたの状況に適していない方法を選んでしまうと、デメリットの方が多くなり整理をした意味がなくなってしまうことも。そうなると、余計に手続きの検討をためらってしまいますよね。
この記事では、あなたが置かれている状況やライフスタイルに最適な解決策を見つけるためのポイントを説明します。また、弁護士に依頼するメリットや、債務整理後の生活の注意点などについても触れます。
このを参考に、あなたはどの債務整理手続きを検討したらいいのか、自身の状況とくらべてみてください。
債務整理とは法律に則って行うちゃんとした手続き
債務整理のことをなんだか怪しい手続きだと感じている人は少なくありません。ですが、債務整理は法律にのっとって行う正当な手続きであり、弁護士や司法書士などの専門家でなければ代理人となることもできません。
よく、「国が認めた借金減額制度」というキャッチコピーで広告をしている事務所を見かけることがあると思いますが、法律に則って行う手続きという意味では、国が認めた制度であることに間違いはありません。
債務整理の流れは、まず法的専門家に相談し、現状の債務状況と返済能力を評価します。その後、状況に応じた債務整理の方法を選択し、債権者への交渉を始めます。基本は、任意整理から検討し、それで解決の見込みが内容であれば個人再生や自己破産を検討します。適切な手続きを経なければならないため専門的な知識が必要になりますが、プロに任せる場合、あなたは専門家からの連絡を待つだけで手続きを進めることができます。
債務整理には3つの方法がある
債務整理には大きく分けて「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つの方法があります。
任意整理は、債権者と債務者が直接話し合いをして利息をカットしたり、月々の返済額を少なくしたりする等の契約内容の見直しを行います。個人再生には、裁判所を介して債務総額の大幅な減額や低金利化、返済期間の延長などが可能です。一方、自己破産は借金全額を免除する最終手段で、これ以上返済が不可能な状況にある人への救済措置となります。どの方法も一長一短があり、借金の状況や生活状況によって最適な手段は異なります。
各手続きの特徴を簡潔にまとめると次のようになります。
任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | |
---|---|---|---|
借金の減額幅 | 低(※1) | 中 | 高(※2) |
財産の処分 | なし(※3) | なし(※3) | あり |
住宅ローンが残っている家への影響 | なし(※4) | 住宅ローン特則を適用した場合なし | 処分の対象となる |
保証人への影響 | 整理する借金によってあり | あり | あり |
費用の相場(※5) | 債権者1社あたり5万円程+減額できた額の10% | 約50万円~90万円 | 約30万円~100万円 |
手続きにかかる期間 | 約3か月~6か月 | 約1年~1年半 | 約6か月~1年 |
信用情報の登録機関 | 5年程度 | 7年程度 | 7年程度 |
それぞれの方法には、独自の特長があり、利点とデメリットも明確にあります。ここからはそれぞれの債務整理の手続きについてもう少し詳しくご紹介していきます。
自身が陥っている借金問題の現状と照らし合わせて、どの方法が自分に適していそうかイメージしてみてください。
債権者と直接交渉して契約内容を見直す【任意整理】
任意整理とは、弁護士などの専門家を介して、債権者と直接交渉を行って借金の減額をしてもらう方法です。
任意整理の主な目的は、将来利息のカットや月々の返済額を減らして、無理なく完済を目指せるようにすることです。利息の免除や元金の減額など、具体的な契約内容の見直しを検討することで、返済計画の見直しと借り元のリスケジューリングなどを行っていきます。
任意整理は裁判所を介さない手続きのため、交渉力が重要となります。相手が受け入れてくれれば元金の減額も可能で、柔軟なリスケジューリングができますが、減額幅は、他の2つの手続きと比較すると小さくなります。また、手続き後も返済が続くことが前提となりますので、安定した収入が必要となります。
任意整理は、債務整理の中で最も費用が少なく手続きを行うことができ、その相場は数万円から数十万円です。
着手金や基本報酬として5万円程度、それに加えて減額報酬と呼ばれる借金を減額できた金額に対して歩合でかかる報酬があり、一般的には減額できた金額の10%となります。
いくら減額できたかによって金額が異なるので、たくさん減額できたらその分多くの報酬がかかるのですが、減額報酬がかかるのは減額できた「元金」にかかるもので、利息のカットだけの場合この減額報酬は発生しません。
債務整理が向いているのはこんな人
- 毎月一定の収入が見込める
- 残りの債務額がそれほど高額ではない
裁判所を通じて債務を5分の1程度まで圧縮する【個人再生】
個人再生とは、裁判所を通じて借金を5分の1程度まで圧縮してもらう方法です。個人再生の特徴は、財産を保持しながら債務を減額できる点です。住宅ローンなどの保証人がいる場合や、自宅を保持したい場合に適した方法とされています。しかし、これには一定の条件があり、裁判所から認められなければなりません。また、手続きが複雑で時間もかかりますので、専門家の支援が不可欠な手続きです。
個人再生の費用の相場は、約50万円~90万円です。この報酬には、弁護士に支払うものと、裁判所へ支払うものがあるほか、住宅ローン特則を利用の有無でも金額が異なります。
個人再生が向いているのはこんな人
- 任意整理では返済が継続できそうにない
- 毎月一定の収入がある
- 残りの債務の額が1000万円以下である
- 自己破産すると資格制限等に当てはまってしまう
- 住宅ローンがある
借金減額の最後の砦【自己破産】
自己破産は、裁判所へ申し立てをして支払い不能の状態にあることを認めてもらい、持っている財産を換価して債権者へ分配します。それでも支払うことができない借金は、その支払いを免除してもらう手続きです。
申立書や自己破産へ至った経緯を説明するための陳述書など、用意する書類も多く、不備があると破産が認められなくなってしまう恐れもあるため、手続きをする際は、専門家へ依頼するのが一般的です。
換価する財産は持ち家や自動車などの一定上の価値があるもので、すべての財産を取られて無一文になってしまうわけではありません。一定の現金や生活に必要な家具・家財などは手元に残すことができます。
自己破産の費用は、約30万円~100万円で、こちらも弁護士にかかる費用と裁判所へ支払う費用があります。また、財産の処分があるのかなどによっても金額が変わります。
自己破産が向いているのはこんな人
- 意整理や個人再生では返済が解決が見込めない
- 決まった収入がなく返済のめどが立たない
あなたに合った債務整理方法の見つける4つのポイント
借金減額の手続きは、自分に合った方法を選らぶことがとても重要です。なぜなら、債務整理の3つの方法はそれぞれ特徴や適している人が異なり、あっていない方法を選んでしまうと手続きが長引いてしまったり、借金が免除されない恐れがあるためです。
ここからは、あなたに合った債務整理の方法をどうやって判断したら良いのかポイントをお伝えします。
ポイント1:元金を3年~5年で返済できる見込みがあるか
任意整理、個人再生は手続き後も支払が続きます。そのため、支払っていける原資がどれくらいあるかで検討する手続きが異なります。
一般的に、元金だけを3年から5年で支払い終えることができる見込みがあるのであれば、任意整理を検討します。元金すべては難しいが、5分の1に圧縮したら3年から5年で払い終える見込みがあるならば個人再生を検討します。
どちらも難しい場合は自己破産を検討することになります。
ポイント2:決まった収入があるか
前述した内容と関連しますが、任意整理や個人再生では、手続き後も返済が続くため、返済できるだけの原資がなければ手続きすることができません。家族などから援助が得られる場合、無職でも手続きをすることができますが、一般的には一定の収入がなければ手続きができません。任意整理の場合、元金のみを3年~5年に分割して支払えるだけの収入が必要です。個人再生ならば毎月の収入の変動が20%以内であるかといった点が判断の目安となります。
決まった収入とは、必ずしも固定給である必要はなく、毎月の収入がおおむね一定している状態を言います。ですので、個人事業主やフリーターの方でも、上記の目安の範囲内の収入があれば、手続きを行うことができます。
ポイント3:住宅ローンの残っている自宅があるか
自己破産をすると、一定以上の価値のある財産は処分の対象となります。
自宅も処分されて競売にかけられてしまいますので、自宅を所有している人は住む場所を失ってしまうことになります。
しかし、住宅ローンが残っている人の場合、個人再生の住宅ローン特則を利用することにより、住宅ローンはそのまま手を付けずにほかの借金を手続きすることができます。債務整理をしても持ち家に住み続けることができることはメリットが大きいため、ローンが残っている家を所有している場合は、個人再生が可能か検討をします。
ポイント4:自己破産した場合の資格制限にあてはまるか
自己破産をすると、一定の職業や資格に制限が生じます。
資格制限に該当する職業などにお勤めの場合、自己破産手続きをしている間はその職に就けなくなってしまうのです。
具体的に、次のような資格や職業が当てはまります。
- 警備員(警備業法第14条)
- 生命保険外交員(募集人)(保険業法第279条、第307条)
- 行政書士(行政書士法第2条の2)
- 公証人(公証人法第14条)
- 公認会計士(公認会計士法第4条)
- 司法書士(司法書士法第5条)
- 社会保険労務士(社会保険労務士法第5条)
- 商工会議所の会員(商工会議所法第15条)
- 税理士(税理士法第4条)
- 宅地建物取引士(宅地建物取引業法第18条)
- 不動産鑑定士(不動産の鑑定評価に関する法律第16条)
- 弁護士(弁護士法第7条)
- 会社の取締役(民法第653条)
これらの職業や資格に該当する場合、自己破産をしてしまうと職を失ってしまいます。それでは、生活の立て直しができなくなってしまいデメリットとなってしまいますので、別の方法から検討をします。
債務整理の手続きをしたい場合どこに相談するべきか
債務整理の手続きをしたいと思ったら、どこへ相談するのがいいのでしょうか。
結論からお伝えすると、弁護士、もしくは司法書士へ相談することがもっとも解決への近道であると言えます。
なぜなら、手続きの代理をすることができるのは、弁護士か司法書士にだけだからです。
しかしそうは言っても、いきなり弁護士や司法書士へ相談をするのは気が引けるという人もいるでしょう。まずは弁護士や司法書士に相談するべき状態なのかを誰かに相談したい、手続きの流れを知っておきたいなど、専門家へ相談する前の情報収取として気軽に相談できるところを知りたいという人もいるでしょう。
借金に関する相談は、弁護士や司法書士へ直接連絡する以外にも、次のような相談先があります。
相談先 | 特徴 |
---|---|
自治体の相談窓口 | 各自治体は定期的に無料の法律相談を実施しています。借金だけでなく身近な法律トラブル全般の相談をすることができます。予約制であることがほとんどですので、最寄りの市区町村役場のホームページなどで検索をしてみると良いでしょう。 |
金融機関等の各種協会 | 各金融機関でも返済に困っている人向けの相談窓口があります。自身が契約しているローンやキャッシングにに合わせて窓口を選ぶと良いでしょう。 日本貸金業協会 日本クレジットカウンセリング協会 全国銀行協会 |
法テラス | https://www.houterasu.or.jp/ |
弁護士会 | 全国の弁護士会でも借金やそのほか身近な法律トラブルの相談をすることができます。 全国の弁護士会の法律相談センター どこに連絡したら良いか分からない場合は日本弁護士連合会が運営するひまわりお悩み110番という電話相談サービスへ連絡し、全国の法律相談センターへつなげてもらうこともできます。 ひまわりお悩み110番 |
司法書士会 | 弁護士同様、全国の司法書士会でも法律相談を行っています。司法書士の場合、借金のほか、相続登記や不動産登記の相談や成年後見に関する相談などをすることができます。(※借金などの相談は司法書士が介入できる金額に上限があります) 全国の司法書士会 |
債務整理のよくある質問
ここからは、債務整理に関してよく見られる質問をまとめました。
債務整理を検討するにあたって、まず自分の状況は債務整理ができるのだろうか、手続き後にどのような影響があるのか気になる人は多いでしょう。ここでは代表的な疑問とその答えを紹介しています。ぜひ、参考にしてみてください。
- 旧姓の借金も整理できますか?
-
はい。旧姓の借金も整理することができます。
結婚などで姓や住所が変わっている場合、契約当時の姓と住所を弁護士や司法書士へ伝えれば手続きをしてもらえます。
- 債務整理をしたら家族に影響はありますか?
-
家族が保証人となっている場合、債務整理をすることで保証人へ一括請求されてしまいます。場合によっては、保証人も債務整理をする必要がありますので、あらかじめ債務整理をすることを伝えておくようにしましょう。
そのほか、家族の仕事や就職活動、進学等に影響が出ることはありません。
- 債務整理の手続きは自分でできますか?
-
弁護士や司法書士は代理人として手続きをおこなうものですので、もちろん、ご自身で手続きをすることは問題ありません。
ただ、交渉する相手や作成する書類は専門的なものですので、知識がないと不利な条件になってしまったり、手続きが認められなかったりといったトラブルとなるリスクがあります。
手続きが長引くとさらに状況が悪化してしまう可能性もありますので、弁護士や司法書士へ相談をすることをお勧めします。 - 債務整理できない借金はありますか?
-
基本的に借金であれば何でも整理することができます。消費者金融や銀行、カードローンだけでなく、個人間の借金も整理することは可能です。ただし、個人間の借金は、業者との借金とは勝手が異なりますので、事前に専門家へ相談しておくと良いでしょう。
そして、自己破産した場合でも免除されない借金にあたるものは、他の債務整理の方法でも整理できないと考えてください。
おおまかには、次のようなものがあります。- 税金や健康保険料
- 交通違反などの罰金
- 婚姻費用や養育費
- 損害賠償
- 雇用している使用人の給与
これらは非免責債権と言い、自己破産をしても支払い義務を免除されない債権です。
まとめ
ここまで、債務整理の方法の特徴と自分にあう方法を見つけるポイントについてご紹介しました。
債務整理の手続きにはそれぞれ減額幅や期間、費用などがことなり、ご自身の収支状況に合わせて手続きを選ぶ必要があります。
どの債務整理を選ぶのがいいのか判断するポイントは、次の4つです。
- 元金を3年~5年で返済できる見込みがあるか
- 決まった収入があるか
- 住宅ローンの残っている自宅があるか
- 自己破産した場合の資格制限にあてはまるか
これらのポイントを踏まえながら、自身に合った方法を選びます。
債務整理についてどこに相談をしたら良いか迷ったら、弁護士もしくは司法書士へ相談をすると、その後の手続きまで一貫して依頼ができるので手間を減らすことができるのでお勧めです。